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ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 3.セイレーン ⑦

「あ~アレ? 今日はいつもより人の集まりが悪かったから、つい使っちゃったの。普段は絶対使わないんだけどね、バレたくないから…でも今こうして気付かれちゃったから、もう二度とここで使ったりしないよ」
そう言って笑っている彼女を見ながらふと、ある疑問が浮かんだ。
「…セレンさんって」
そう言いかけた時、スマホを見ていたセレンさんが言った。
「あ、ゴメン。そろそろ行かなきゃ…明日もまたここにいるからさ、続きは明日にしよ」
じゃあね、と言いながら彼女はギターケースを背負うと、駅構内へと小走りで行ってしまった。
「明日…」
去って行く彼女の背中を見ながら、ふとわたしは、明日することができたことに気付いた。

翌日、わたしは昨日と同じ時間帯に、寿々谷駅前のバスロータリーに向かった。
昨日言っていた通り、セレンさんは今日もそこにいた。
バスロータリーの片隅でライブをする彼女の周りには、昨日よりも人が集まっていた。

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