0

ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 3.セイレーン ⑧

「やっぱり、来てくれたんだね」
ライブが終わって周りから人がいなくなってから、セレンさんは自分の方に近寄って来たわたしに言った。
「まぁ…暇なんで…」
「暇って言ってられるのは今のうちだよ? 多分だけど」
セレンさんは、アコースティックギターをギターケースにしまいながら笑いかけた。
「そういえば…昨日、何聞こうとしてたの?」
「へ?」
わたしのポカンとした顔を見て、セレンさんは口を手で覆って笑った。
「昨日。アタシが時間だからって、会話が強制終了しちゃったでしょう? あの時、何が聞きたかったのかな~って」
「あ~っ」
そうだった、わたしは昨日、セレンさんに1つ聞こうとしたのだけれど、時間がなくてちゃんと聞けなかったんだっけ。
「じゃあ、聞いていいですか」
「どうぞ」
彼女はそうわたしに促した。
「…セレンさんって、いつもここでライブしてるんですよね?」
「まぁ忙しいから週1、2回ぐらいだね」
「もしかして、将来歌手とか目指してるんですか?」
「あ~、まぁね。本当になれるか分かんないけど。ここだけの話、家族に内緒でこういうことしてんだ」
セレンさんは恥ずかしそうに頭を掻いた。

  • ハブ ア ウィル ―異能力者たち―
レスを書き込む

この書き込みにレスをつけるにはログインが必要です。