「あの~、わたしが言うのは何か変な感じがするんですけど、…セレンさんの能力、上手く使ったら夢叶うんじゃないのかな…」
自信なくうつむきながらわたしは言った。
そんなわたしを見ながら、セレンさんは苦笑いした。
「まぁ、ね…確かに、”セイレーン”の能力って、上手く使えば人の注目集めて、有名になれるかもしれないけどさー…やっぱり、違うんだよねー」
セレンさんは、遠くの方を見つめながら続ける。
「結局さ、能力使って人の注目集めたとしても、それは”アタシ”じゃなくて、”セイレーン”の力なんだよねー。アタシ、”船戸 セレン”の力じゃない―歌手になりたいと願っているのは”セレン”だから、アタシの力で頑張らないと」
「…やっぱ、そうですよね…」
”使わない理由”は、なんとなく予想がついていたから、返答が思った通り過ぎて、聞いた自分にちょっとあきれてしまった。
「あと、”異能力”って、使い方間違えると危ないから…」
え、とわたしは思わず言った。どうして…?
「例えば、”セイレーン”。『周りの人の意識を集める』能力なんだけどさ、あんまり長時間使っていると、周りの人の”意識”がアタシに集中して、周りの人が周りの人自身がやっていることに対する注意が散漫になるでしょ? …色々事故とか、トラブルとか起こるかもしれないから、アタシも、”セイレーン”も、この能力はむやみに使いたくないんだ… ま、光る目が目立つから、ってのもあるけど」