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妖怪とGW 上

「なあ木村」
多々良木は、PC画面にへばりついてキーボードを叩く木村に声をかけた。とあるアパートの木村の部屋でのことである。
「何だい多々良木。ポテチ食いながら漫画を読むのはいいが汚さないでくれよ」
「わぁーってるよ。……んでひとつ訊くが、日本って確かいまGWだよな?」
「ああ」
「俺はそれを機に現世(うつしよ)に観光しに来た」
「そうだ」
「木村は現代日本を案内してくれるという約束付きで」
「んだっけか」
多々良木はポテチのかすを口に流し込んでコーラを呷った。多々良木の喉からごくごくとおよそ人間では出せないような音を出したが、げっぷは不思議なことに出なかった。力でねじ伏せたようだ。
 ぷはっ
日本は今、前代未聞の10連休の真っただ中にいた。鈴木も暇ができたことだし、前々からこちら側に来たいと喚いていた多々良木を誘ってみた。鈴木としては一緒に温泉にでも行ければそれでよかったのだが、多々良木が「どうせだから現世案内しろ」と言ってきたのでいろいろと予定をたてていたのだ。

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