「そんで今日は主要観光地が混んでいる予想と夏日に近い気温になる予報から、適当な近さであまり繁盛してなさそうな甘味処に案内してくれる予定だった」
「うんうん」
「……木村。お前今何やってる」
「仕事」
「だよなぁーー!! なんで前々から立ててた予定すっぽかして仕事にのめりこんでるのかなぁーー!! えらい! いやえらいけど! 休も!? 折角のGWだよ!? なんで休まないの!? 」
木村は絶賛仕事中だった。時刻は昼に差し掛かり予報通りの夏日近い気温がじっとりとした汗をかかせる。冷房をつけたかったが、多々良木が腹を下すので窓を開けている。汗でずれた眼鏡を指で押し上げつつ、詰め寄ってきた多々良木をどうどうと宥める。
「矢継ぎ早に言わないでくれ。それでだんだん顔を近づけないでくれ。角が刺さる。……そりゃ僕だって休みたいよ。でも入っちゃったんだよ、仕事」
「いつ」
「昨日」
「俺との予定は」
「それに関してはマジですまん」
「…………」
「ごめんって」
「…………日本〇ね」
「おいどっかの呟きパクってんじゃねぇ」
あーあこんなことなら幽世に誘拐すればよかったと割とマジトーンで呟く多々良木に、木村は苦く笑う。
「今の日本なんてこんなもんだよ。逆にいい観光になったでしょ」
「……確かに日本の裏側は覗けたわな」
どうだった?
まっ黒だった
あはは、それな
乾いた笑いが広くないアパートの一室にこだまする。