「今、私は幸せです。」
瑛瑠の突拍子もない声に、チャールズは微笑んで口を開く。
「新婚さんみたいですね。」
抑揚のないその声。もはやからかう気すら起こらないほどまっすぐなその言葉。
「改まってどうしたんです。」
瑛瑠は、自分で放った言葉に別段責任を持つわけでもなく、ティーカップに手を伸ばした。
「私って幸せ者だなって、唐突に思ってしまったの。……思ってしまった、なんて、語弊があるかしら。」
瑛瑠がチャールズを見つめるから、チャールズの顔から貼り付けの微笑みは消える。
「特にいいことがあった、なんていうわけじゃないのだけれど。私って幸せだなって思えることが、本当に幸せでたまらないの。」
見つめる瞳に、いたずらな色が混ざる。
「確かに、いまだに訳もわけらず異世界にいるし、私の持つ記憶は欠けているし。」
チャールズの嫌がる話題だと知ってあえて振ってみると、案の定わずかに顔を顰めた。
「できないこともたくさんあるし、だめだなーって思うことだってたくさんある。」
でもね、
「好きな人が居て、その人に認めてもらえて、大切だって言ってもらえることが、本当に嬉しいんだな、きっと。」
そう言って微笑む。
「だからね、幸せって自分で作れると思うの。言葉にして初めて、幸せって形になるんじゃないかな。」
__Happyは舌先から。