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ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 3.セイレーン ㉑

「あ! ちょっと…」
「待て待てここで行くのかよ⁈」
わたしとネロは思わず目をパチクリさせた。
「だってさー、アタシもアタシで用事あるし…それにさ、もうキミ達だけでも十分仲良くできるでしょう?」
セレンさんは振り向きざまにそう言う。
「え、でもまだ…」
「いや、ぶっちゃけこいつと一緒は嫌なんだけど…」
「うーん…」
その言葉にわたしやネロは茫然とし、耀平はちょっと苦笑いした。
「それじゃ、また!」
そう言って彼女はまた駅の方へと歩き出した。
「これでいいのか…」
師郎はぽつっと呟いた。そして相も変わらず黎は、黙って駅の方を見つめていた。
「いや、あんま良くねーよ」
さっきの師郎の呟きに、ネロがスパッとツッコミを入れる。
「そうだね…」
わたしは無意識のうちにそう彼らに言っていた。
わたし達は、じゃあねと言わんばかりにこちらに大きく手を振りながら去って行くセレンさんの後ろ姿を、ただボンヤリと見ていた。

〈3.セイレーン おわり〉

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