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三毛猫

 いつものように作業着に着替え、部屋から出て階段を下りたら、三毛猫がいた。
 あー、三毛猫だー、と思ってしばしぼんやり見てたら。
 どこからか、きゃーっという叫び声がした。
 ああそういえば今日は日曜日だったと気づいて部屋に戻った。
 
 夕刻、空腹を覚え、中華料理店へ。
 厨房に、明らかに中国人とわかる男が三人。ホールに、女の店員が二人。一人は、茶色い髪の巨乳。もう一人は銀縁の薄いフレームのメガネをかけた黒髪の背の高い美人。カウンター席に案内される。
 隣のじいさんがやたらとからんでくる。客がはけてきてカウンター席に俺とじいさんだけになったタイミングで美人店員が訛りのない日本語で、奥の席に移りますかと言ってきたが、いや大丈夫だとこたえた。厨房では中国語でやりとりをしていたので、おや、と思い、紹興酒のロックを追加注文したときに、中国語上手だね、と言ってみたら、笑って、中国人です、と言った。
 バイト終わりは一一時だと言った。近くのバーで待ち合わせることに。
「日本に知り合いもなく一人なんて、寂しくないのか?」
 彼女は笑って言った。
「寂しいというのは感情です。人間だったら感情ではなく心を持たなくては」
 そうか。そうだな。

「お客様、起きてくださーい。閉店です」
 目を開けると、メガネ美女が俺の顔をのぞき込んでいた。俺は、ああ、すまん、と言って顔をこすった。俺の顔は、潤いがなく、かさかさしていた。
 スマホのカメラで顔を見てみようかと思ったがやめた。どうあがいても、きゃーっという叫び声からは逃れられないからだ。

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