「っ......!!!」
ネロは飛び起きた。痩せ細り衰えた体がみしり、と悲鳴をあげる。しかしその痛みよりも、右目の奥に疼く鈍痛のようなものの方がネロをひどく苦しませた。背中は独房の気温からは考えられないほどの汗をかき、じっとりとにじんでいた。これほどの汗をかいたのも幾年ぶりだろうか。
喘ぐような過呼吸をゆっくりと整え、ネロは湿った石の床に再び横たわった。冷えた自分の汗が不快だ。
痛み続ける右目を押さえ、物思いに更ける。さっきの夢は一体なんだったんだろう。よく覚えていないが、出鱈目な詩のような文言だけは覚えていた。
ディアルキアの息子、盾を失う
王の末裔、侵略の子を討つ
旅は不完全なまま終わり
そしてもう一度、少年は○○○○○
最後の部分はよく聞き取れなかったか、覚えていないかだが、他の部分は確かに覚えている。しかしこれはどういう意味だろう。
「ディアルキア」は確か、創世神アルセイシアの息子で、破壊の神だったはずだ。これについてはよくわからない。「王の末裔」、というのは誰のことだろう。現トルフレア王ルーガルのことだろうか。しかし奴は末裔ではない。それ以外のところはまるでさっぱりだ。特に最後を聞き取れなかったのは痛いかもしれない。
ただひとつ、わかっていることがあるとすれば、これは確かに『デュナの神託』だということだ。王や覇者が英雄を遣わすときに英雄たちが必ず受ける予言。自分は英雄なんかじゃないし、ましてや誰かに遣わされたわけでもない。