瑛瑠が校門前に着いた時には、既に先客がいた。
「こんにちは、望さん。」
瑛瑠が声をかけると、こちらを向いて笑いかけてくれる。
「瑛瑠さん、こんにちは。早いね。」
「望さんこそ。」
瑛瑠が微笑むと、柔らかい風が吹く。風が、二人の髪を緩く撫でた。
「……望さん。」
静かな瑛瑠の呼びかけに、視線を向けて応える。
「今、幸せですか?」
望は静かに笑って、うん,と答える。
「藪から棒にどうしたの?」
こういう時、望は質問に答えてくれるから、やはり誠実なのだろうと思う。
望の顔を見て、なんとなく感じた。自分との隔たりを。
だから、瑛瑠は微笑む。
「いいえ、幸せなら、いいんです。」