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ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 4.フェアリー ⑧

「まぁまぁみんな、そこまで疑わないの」
「でも…」
「―不見崎(みずさき)さんは何もしていない、なんにも、ね?」
笛吹さんは眼を細め、満面の笑みでそう言った。
すると、さっきまで敵意や嫌疑が滲んでいた彼女達から、それらが急激に薄れていった。
「…そう」
取り巻きのうちの1人がぽつりと呟いたところで、授業開始のチャイムが鳴った。
ちょっと前まで殺気立っていた彼女らは、何事もなかったかのように自席へと向かっていく。
「いやー、大変だったねー。何かゴメンねー、あの子たち…」
笛吹さんは笑顔でわたしの方を向いた。
「ねぇ笛吹さん―」
ふとさっき思ったことが、思わずわたしの口をついて出かけた。
「あ、先生来たから続きはあとね。…放課後、誰もいないときに話しましょ」
何かに気付いたのか、笛吹さんはわたしの言葉を手で遮った。
その顔は相変わらずの笑顔だ。
わたしは、モヤモヤした”何か”を抱えたまま自席についた。
さっき笛吹さんが友達たちを制止した時、その細まった目が微かに光ったのは、ただの見間違いじゃなかろうか―

  • ハブ ア ウィル ―異能力者たち―
  • 「1.ネクロマンサー」のまとめ作ったよ!
  • ぜひ見てね!
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