0

文学少女(3)

 私の好きな或るアーティストが、「音楽と文学は似たようなものだと思う」と言っていた。「どちらも、書き手の自己表現なんだ」と。私はそれを聴いて、『だから私は音楽に惹かれたのかもしれないな』と思った。
 或る暑い夏の日、私はいつも通り一人で学校から帰っていた。その日、私は朝からとても気分が悪くて立っているのもやっとだった。
私がいつものように人気のない河原を歩いていると、ふと上から飛行機の音がした。その音がまるで自分のすぐ真上にあるような気がして、私は何気なく上を見上げた。その瞬間、空を見上げたはずの私の目の前が真っ暗になった。そして、私はそのまま気を失ってしまった。
 気が付いた時、私は真っ暗闇の中にいた。頭もちゃんと働いて意識もはっきりしているのにも関わらず、何故か周りが暗かった。初め私は、何らかの理由で目隠しをされているのだと思った。理由は分からないけれど、その解釈が一番納得がいくような気がした。しかし、『それならば……』と、少し疑問を持つ自分もいた。
『目隠しならば、少しくらい光が漏れ入っても良いのではないか? もし、光が漏れ入ってこないようにきつく結んでいるとしたら、何故頭がきつくないのだろう?』
 そこで私は、目隠しを取ろうと頭の後ろに手をやった。しかしそこには、本来あるべきはずの目隠しの結び目がなかった。いや、結び目だけではなく、目隠しとして使用されているはずの布等すらなかった。そして気が付いた。目には何も巻かれていなかったのだ。
 その事実を知った時、私はそのまま動けなかった。しばらくの間、全くと言って良いほどその状況における理解が出来なかった。そしてその意味が分かった瞬間、私はありったけの声で発狂した。今思えば、普通に考えてそこは病院だったのだから、とても周りの迷惑になっていたと思う。しかしその時の私は、今いる場所がどこなのかすらどうでも良くなっていた。私の声を聞きつけて、何人かの人がやってきたのが足音でわかった。その中に母の声がして、ようやく私は落ち着いた。私が母に対して、初めて安心感を覚えた瞬間だった。母が言うには、道端に倒れて動かなかった私を、偶然通りがかった人が見つけ、救急車を呼んでくれたらしい。

~続~

  • 小説
  • 「或るアーティスト」の言葉もフィクションです(笑)
レスを書き込む

この書き込みにレスをつけるにはログインが必要です。