走った。祖母の家まで、走って走って走って走った。まだUFOがあるかもしれないと。
だが、庭には既に何も残っていない。破片や跡など、何一つ。
そんな中、まだ状況を呑み込めていない私に、一本の電話が入った。
『はやく病院へ、ばあばと来るんだ!』
父からだ。病院へは歩いて5分程度。胸が、どくりと波打つ。この偶然の奇跡に、胸の鼓動が高まる。
はやく。はやく行かなきゃ。
台所にいるであろう祖母へ、その場で病院!と叫ぶ。伝わっただろうか。そう思うも、今の私は、考えるよりも先に体が動いていた。一刻も早く着きたかった。
3階の304号室。頭の中でそう反芻させ、走る。
そして、病室の扉を開いた。
「お母さん!」
疲れているような、それでも嬉しそうに微笑む母の腕の中には、小さな小さな男の子。私の、弟がいた。覗き込むと、先ほどまでの男の子と顔がダブった。茶色い髪と、深く澄んだ黒い眼。
私は、息を呑んだ。
続く