「この子の名前、何にしようかしら。」
母の言葉に、強く反応する。
「“宙”がいい。宇宙の宙で“そら”」
母は笑う。
「それじゃあ、空ちゃんの名前を呼ぶときと、聞き分けがつかなくなるわ」
そんなの、ニックネームでも何でもつけてしまえばいい。
私の気迫に圧されたのか、ちょっと間をおいた母は、そうね、と呟き、
「この子の名前は“宙”にしましょう。空ちゃんが名付け親ね」
と微笑んだ。
私は嬉しかった。
この子を、あの海に連れて行かなくては。「馬鹿」ばっかり言わないよう伝えなくては。あと、UFOを勝手に操縦しないように言うことも。言いたいこと、伝えたいことが山のようにあって。
それでも、一言目は決まっていた。
「また会えたね、宙」
さっきよりもずっと小さい宙が、笑っているように見えた。
「ほら、言ったとおりだろ、姉ちゃん」
そう、言っている気がした。
おしまい。