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異国からやってきた少女がひとり佇んでいた。
少女の、まるで金を鋳溶かしたような髪が夏の陽光を受けて溢れんばかりに輝いている。遠くの空の青を眺めていたその少女は、こちらを見ると笑いかけて寄ってくた。
「そんなに空が好きなのかい?」
「いいえ、違うわ。こちらの空は色が薄いと思っていたのよ」
そうかい、向こうの空の方がお好みかい? と訊くと、そんなことはないわと返ってきた。心がまだ遠くにあるような声だった。
「向こうの空は寒々しいほど青いの。夏なのに凍えてしまいそう。こちらの空は向こうのよりは温かいけど、でもなんだか嘘くさい青だわ。ひどくのっぺりしてるのね」
だからどっちもあまり好きではないわ、と明朗に話す少女。
「今夏はいつまでいるんだい?」
「全部お父さんの仕事しだい。私にはさっぱり分からないわ。でも少なくとも今日は大丈夫よ。お父さんが風邪をひいて寝込んでるの」
明日には治るわと自信ありげに話す少女の目には、疑いなど微塵も映っていなかった。
少女の眼。
彼女に嵌っているそれらの色は左右で違っている。虹彩異色症。俗にいうオッドアイだ。
「……うん、やっぱり青は嫌い。私の左目を取って、右目と同じ色にできないかしら」
カラーコンタクトならいいかしらと宣う少女が持つ目の色は青と金の二つ。左が青、右が金だ。空の色と、彼女の髪の色。
「そうか、青は嫌いか」
「ええ、嫌い。綺麗だし、愛おしいとも思うけどね。でもやっぱり好きになれないの」
「どうしてだい?」
「だってね、例えば水は青で表されるでしょう。雨も青で表されるでしょう。涙も青で表されるでしょう。私は人を憂鬱にさせたり悲しませたりするものは嫌いなの。……そう、たとえばあなたのことよ。キラー・クラウン」
青い涙が描かれているその顔から、低く嗤い声が漏れる。

  • 奇を衒うピエロ、奇眼を持つ少女
  • マリオネットガール
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