「中身、何だった?」
よくスーパーのお菓子売り場に売っている、ウエハースがおまけに付いているカードの袋を開封しながら、友達が尋ねる。
「…これだよ」
うちはすっと彼女に袋の中のカードを見せた。
「The Fool…”愚者”、か。タロットカードの大アルカナの1番最初…」
「愚者?」
「そ、愚者。自由人。放浪者。このカードの絵柄の通り、道化師とも言う」
友達は自慢げに自らの知識―いや趣味を披露する。
「…うちにはさっぱりだなぁ」
うちはカードに描かれた愚者、いやむしろ道化師を眺めながら呟く。
「いつも自由にやってるあんたにピッタリだよ」
「そぉ?」
うちはちょっと首を傾げる。
「うち、これウエハース目当てで買ったんだけどなぁ」
「ホント、あんたらしい」
そう言って友達は自分のカードを見せる。
「あたしは…魔術師。どぉ? よくない⁇」
「さぁね…」
うちはカードのおまけのウエハースをかじりながら言う。
「にしてもあんたホントこういうの好きだね。集めてんの?」
「あー、お小遣いが許す限り、かな。まぁすでに何枚かダブってるんだけど」
「ふーん」
前々からそうだけど、こいつの趣味ってなんか変わってる。
変なカード集めてたり、変わった曲聴いてたり、オッドアイの変なぬいぐるみ連れてたり、ファッションだって個性的…ホント自由人、タロットの愚者、道化師そのもの。
「あんたって自由な人間ね」
ぽつり、と何気なくうちは呟いた。
「ふふ、ま、小さいころは周りに滅茶苦茶振り回されてきてきたからねぇ… 今は自分の意志で自由にやらせていただいてるよ」
彼女はそう笑って、ショッピングモールの屋上の柵から下界を見下ろした。
上から見える、ショッピングモールの入り口では道化師…いや大道芸人が芸を披露している。
彼女はそれをここから眺めているのだろう。
「なぁあんた、あれ…大道芸見たいんなら、下行けばいいんじゃない?」
彼女は長い髪を揺らしながら振り返る。
「ここからでも、あたしには十分見えるわ」
ああそうだったな、とうちは笑い返した。
フフフッ、とどこかわざとらしく笑う友達の瞳は、綺麗なネオンパープルに輝いていた。
ご参加ありがとうございます!!
女の子同士の会話の1ページを切り取った詩。
でも、どこか儚げな様子が感じられます!
こういうのもいいですね…!
レスありがとうございます。
儚い、ですかね…? でも読み返してみたら意外とそう感じるなぁ…(笑)
作者本人はただただ思いついたのを書いただけですが(笑)