午後の西陽になにもかも色褪せてしまった
黄色いセロハンテープがついたアルバムを焼き払った灰が舞う 火の粉が舞う
ゴミ箱の傍らに落ちたティッシュに滲んだ真っ赤な口紅
───あんたの顔なんて誰も見やしないのになんで毎日顔をつくるんだい?
嗚呼なにもかも忘れてしまったな
生まれたところも自分の齢も、誕生日もなにもかも。言葉も文字もなにもかも。
──全部あんたには要らないだろう?無駄なものは早く捨ててしまっていいのさ。
嗚呼なにもかも忘れてしまったな
──あら、貴方はだあれ?
折れてしまった口紅の欠片を握り
鏡に紅を引く。