0

オフィーリア第二話

 ソファー席に座り、店内を見まわした。ミレイの、オフィーリアのポスターが目にとまる。
 ビールが運ばれてきた。僕はたずねた。
「あのポスターは、誰の趣味?」
 すると彼女は、笑顔になってこたえた。
「わたしの趣味です。あまり絵とか詳しくないんですけど、絵の好きな友だちとイギリスの美術館に行ったときになぜか引かれるものがあって買ったんです」
「……オフィーリアは、来ないんだけど、いま、上野でミレイ展やってるの知ってる? よかったら、一緒に行かないか?」
 初対面の女性をいきなりデートに誘うなんて初めてのことだった。なぜだろう、びびっとくるものがあったのだ。
「行きたいです」
「じゃあ連絡先交換しとこう」
「はい。スマホ持ってきますね」
 嬉しそうにスマホを手にして戻ってくる彼女を見て、急に僕はさとった。僕たちは何度も生まれ変わり、何度も出会っていたのだ。そしていつも、別れは突然やってきた。
 軽自動車がガラスをぶち破り、突っ込んできた。

レスを書き込む

この書き込みにレスをつけるにはログインが必要です。