そういう訳で、僕の家まで来たわけなのだが。
「チャチャさん、アパート暮らしなのですね」
「うん…ってあれ、鍵が開いてる。出るときに鍵をかけ忘れたかな?」
「……もしかして中に誰かいたりして」
「はっはっは、そんな馬鹿な。大体止まった時の世界で動ける人間なんて……え」
「そういうことなんでしょうねぇ」
「ええ……。けど僕の部屋の鍵を開けられる人間なんて、僕自身と、あと……もしかしてあいつ、いやまさか、そんな都合良く周りの人間が能力者なわけ……」
「どんなご都合主義でも起こり得るのが小説ですから」
「あんまりメタいことを言うなってば」
そして戸を開けてみると、中には僕のよく知っている人間が寛いでいた。
「よォ。遅かったじゃあないか。待ちくたびれたぜ、フッシー」
「……お前だったのか、鈴木」
「あれ、この人は確か」
「あれその子。おいフッシー、お前ついに……」
鈴木の野郎が安芸ちゃんと僕を交互に見て、僕に何とも形容し難い眼を向けてきた。
「違うから!そういうアレじゃあないから!」