精一杯笑顔を作る。驚いているのは花だけじゃない。
「瑛瑠?私、待てるよ……?」
怪訝そうな歌名に、瑛瑠は微笑む。
「ごめんね。実は足、ちょっと痛くて。あとで、土産話でもたくさん聞かせてください。」
――お願いだから。
すると、今まで何も言わなかった英人が、歌名の肩をたたいた。
「歌名、行くぞ。」
「英人くん⁉」
「花さん、瑛瑠のこと、よろしくお願いします」
その様子に、望は呆れたようにため息をつき、瑛瑠を見て苦笑した。
「ほんと、霧も大概だけど、瑛瑠さんも困った人だよね」
「すみません」
確かに、察しのいい英人や望に甘えて、自分を守ってしまった。歌名に申し訳ないことをしたとは思っている。
「ぼく、瑛瑠さんと花火見るの楽しみにしてたんだけど。……今日、ちゃんと花火終わるまでは起きててよね。同じ時間だけは共有したと思っていたいからさ」
ふっと囁き、望も扉へ向かう。歌名、行くよ,と声をかけるものだから、とうとう出なきゃと思ったのか、
「瑛瑠、お土産いっぱい持ってくるからね!」
なんていうものだから、瑛瑠も乗っかって、お土産期待しています,なんて言ったのだけど。