観月の顔が一瞬歪む。
そして、まっすぐ紫陽を見ていた視線を外し、ごめん,と音にする。
「それ、面白かったよ」
当たり障りのないことを呟いた。
「……そうか。なら、良かった」
素っ気なくそういうと、紫陽はおもむろに本を取り上げ、パラパラとめくる。
「……どこが?」
観月は、まだ話し続けるの?とでも言いたげな目をしている。
「主人公に、全然共感できないところ」
紫陽は首をかしげる。
「それ面白いのか……?」
悪くなった流れなどとうに忘れてしまった紫陽は、その実本の話をしたくてうずうずしていた。
「あ、でもあそこは面白かっただろ?ほら、宇宙船が落ちてきたとき」
「主人公があんたに似てるから共感できないって皮肉を言ってるんでしょうが!私は宇宙船のとこよりも分子を可視化できた時の博士の反応のほうが面白かった!」
相変わらずのすれ違いである。
「ああ、あそこかあ……。通だな、お前も」
観月とは裏腹に、楽しそうな紫陽。
「TP-306が活性化したときの描写はほんと最高だよな!わかってるじゃないか」
観月は、その楽しそうな表情に脱力してしまった。
むくれるだけ労力の無駄である。
「そうだね、まるで核融合反応をペットボトルの中で見たかのような感覚だったね」
「おお、お前もそう思ったか。やはりそうか、もしかしたら作者は中性子分野の研究に通じてるのやも知らんな……」
そういうと紫陽は、観月のことなどお構いなしに、一人でぶつぶつと考え込み出してしまった。
こうなってはもう仕方がない。紫陽がどんな性格だか、観月はわかっているつもりだ。
片付けていたら見つけた、なんて、そんなのは嘘だ。あれだけ細かな設定にたくさんの言葉たち。フィクションだかノンフィクションだかわからないような本を理解するのに、これだけの時間がかかってしまうのは仕方がない。
けれど、いつもつまらなそうにしている紫陽が、本を勧めてくる時だけはあんなに楽しそうなのだ。これに付き合うことを一つの娯楽としてしまっている自分も自分なのだが。
帰りにも捕まるな、そう思い、苦笑して静かに机から離れた。
今回、紫陽が貸してくれた本のタイトル、それは
ねえねえねえ、知ってますか!?
私が発狂するって。
見た瞬間、最強やんって叫んだんですよ!?
強い…
この2人がコラボするとね…強くなる予感しかしてなかったんですよ!?
このなんか…日常風景みたいな感じのやつ、私、好きなんですよ(謎)
待って…言葉にできない…
りんちゃん》
ふふ、とっても嬉しいです。
長かったはずだけども、ここまで読んでくれてどうもありがとう。
すごいよねえ…よくやってくれたなって。めめんとさんには感謝感謝です。
いつかりんちゃんもできたらいいね、なんて…笑