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ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 5.クラーケン ⑲

「…やっぱすごいなぁ」
「そう? こいつのお陰で僕は色々と大変だったんだけど?」
思わずこぼれた感嘆の言葉に、美蔵はちょっと微妙な顔をする。
「”クラーケン”が発現し始めた頃、よくこの能力で周りに被害が出てたんだよ。自分も、異能力なんてものが顕れ始めてるなんて気付かなくて、無意識のうちに能力を発動しては周りを盲目にして、面倒ごとを随分起こしてた…自分でも周りに何が起こってるか分からなくて、周りとトラブって大変なことになってたし」
彼は少し間をおいて苦笑する。
「…ま、完全に発現したら原因が全て分かってすっきりしたけどな。もちろん”クラーケン”のせいで色々大変だったけど、別に憎んだりはしてねえよ…”異能力”は自分という存在の、一側面みてえなもんだから」
「自分の、一側面…」
わたしは思わず復唱する。つまり、さっきネロが言っていたように、もう1人の自分ってことか。
「そ。人間の長い歴史の中で、延々と引き継がれてきた”もう1つの自分”。ま、自分は唯一無二なのに、他の人に引き継がれるってちょっと意味分かんないけど」
ま、ずっとそういうもんなんだけどなーと彼は笑う。

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