日常的に日常生活ができない。
それは、どういうことなのだろう。
「なんかさ、身体が、動かなくて。いや、動くはずなんだけど、動かなくて。家に帰った後とか、うずくまったまんま動かなかったりする。1時間……とか。ご飯も食べずにお風呂にも入らずに、なんならイスにも座らないで、床にうずくまって膝抱えて」
桜木は、どこかここではない別の場所を見ているかのように見えた。
「声が、するときもあるんだよね。心の声が。『痛い、苦しい、嫌だ』って。ずーっと。いや、まあ3時間もすれば無くなるけどね。でも、その間はずーっと。言われるだけで結構苦しいんだよね。それで、いつもはそんなことないんだけど、部活中にそんな風になっちゃったから、つい……。まさか部室でいきなり泣くわけにもいかないしさ」
あはは、と言って。桜木は、またどこかを見る。
俺にはきっとその言葉の半分も理解できていないけれど、彼女が色んなものをこらえてきたのは分かった。
だから。
「言いたいこと、正直なこと、全部言ってみろよ」
その全てを、吐き出して欲しいと思った。