「…鷲尾さん、それはちょっとやりすぎなんじゃ…」
わたしが諫めようとすると、”ハルピュイア”はぴしゃりと返した。
「やりすぎって言ったって一応正当防衛になるから別にいいのよ。こうやって他の能力者が抑えていかないと、みんな大変なことになるし…」
そう言いながら、彼女はネロの腕をちょっと乱雑に離す。
”ハルピュイア”の能力から解放されたネロは何も言わずに相手を睨みつけた。
「…抑止力、か」
ぽつり、と黎が呟いた。
「…”抑止力”?」
わたしが思わず聞き返すと、さっきまで黙って場を見ていた亜理那が話し出した。
「他の能力者の暴走を抑える異能力者のことよ。まぁ、どの異能力者も、他の能力者の抑止力であることには違いないんだけどね。世界の秩序とかを崩さないようにするために」
「特に”ネクロ”なんかの強力極まりないのとかは、おれらとかで抑えてかないとダメだ。ついでに言うとコイツは感情任せになりやすくて危なっかしいし」
耀平も亜理那の言葉にうなずく。
「―秩序や秘密を守るためなら、最悪の場合自ら手を下すことだって構わねえよ」
くすりと笑う耀平に、わたしは背筋が凍り付いた。だが少し引っかかるものがあった。
「…でも、」
でも、最悪の場合、自ら手を下すのなら―とわたしは彼に浮かんだ疑問を投げかける。
「それでも友達?」
ネロがぴく、と反応したような気がした。