リクト。によるエッセイ。 不定期更新。
レスもお気軽にどうぞ。 過去の投稿はタグから。
#3 『囚われの身』
言われるがままにイスに座ると、首に布が巻きつけられた。さらに全身にも布がかけられ、もうほとんど抵抗ができない。
背後にいるのは、名前も知らない人。
私の髪や肩に触り、時より話しかけてくる。
苦しいよ...。 怖いよ...。
はい。というわけで、私は美容院にいる。
毎回、前述したような恐怖に襲われてしまうのだ。
特に、首に巻かれる布が嫌いである。
ここ数年のことだが、マフラーなどの首に巻く類のものが苦しくて仕方がない。
首を守るのは動物の本能といえるが、なぜここまで過敏になったのだろうか。
このように色々怖くなってしまうので、なるべく思考に集中するようにしている。
考えることは時によって様々だが、少しは気を紛らわすことができる。
しかし、急に話しかけられた時にはひどく驚いて、変な声が出てしまうのは悩みだ。
おっと、前髪に取りかかったようだ。切り過ぎだと気がついても言い出せなかったあの日のトラウマが蘇ってくる。
よし、今回は大丈夫だった。
午前10時48分、無事、解放。