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桜木ノア #14 9月某日

桜木ノアが抱えてきたもの全て聞きたいと、聞きたいというよりは外に出してほしいと思ったのだが、桜木は戸惑ってしまった。
「えっ……と、正直なことって言われても、よくわからないかな」
「……何もお前は嘘ついてきたわけじゃねーだろ。他にも何か、隠してきたことがあるんじゃねーかと思ってさ」
「隠してきたこと、か」
心当たりがあったのだろう。桜木は俺から目を逸らし、一呼吸の間の後に言った。
「みんなのことが、羨ましい」
そこからは、堰を切ったように言葉が溢れ出した。
「みんなさ、朝起きて、学校行って、帰ったら、めんどくせーなーなんて言いながら宿題したり……とかさ。そんな何気ないことを、何気ないものとして出来るのが、すごく羨ましい」
その意味を、完全に理解することはきっとできていなかった。だってそれは、桜木も当たり前にやっていることだと思ったから。

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  • 次回は9/30更新予定
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