リクト。によるエッセイ。 不定期更新。
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#5 『休日』
エッセイを読む。
幾度となく読み返してきたその本を、読む。
雨の音。
換気扇から漏れる音。
マスクの匂い。
紙の感触。
微かな喉の痛み。
時折、車がつくる波の音。
彼が綴った一つひとつの言葉。
いったい何分経っただろうか。満足して本を閉じた。
幸せ。
ごく自然に浮かんできたその言葉に、戸惑う。
飛び上がって喜べるような何かがあったわけではなかった。しかし、どんな不安も、恐怖も忘れていたその時間は穏やかで、幸せだった。
「幸せってなんだろう」
こんな問いは無駄だったのかもしれない。
幸せそうな人を見て、焦る必要はなかったのかもしれない。
幸せになれるかどうかではなく、既にある幸せに気付けるかどうかで、人生は変わる。
かっこつけたかっただけだろうか。
それでもいいから、この言葉を信じたいと思った。