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蜘蛛の糸

カンダタが糸登りに疲れて、少し休憩と下を見ますと、何と他の亡者達もどんどん登ってきているのでした。あれだけの量の亡者、一人でも切れてしまいそうな細い糸に、どうして耐えることができましょうか。
「こら罪人ども!この蜘蛛の糸は……」
しかしここでカンダタ、言葉を止め考えました。もしも自分が今やろうとしていたように下手に騒いだりすれば、その振動で糸が切れてしまうかもしれない。幸いにもまだ糸は切れていない。では今必要なのは糸への錘を減らす事ではなく。
「おいお前ら!急げ!急いで登って来るんだ!しかし決して下手に糸を揺らすんじゃあないぞ!一人ずつ!一人ずつだ!隙間を作らず慎重に俺のところまで登って来い!」
亡者達がその通りカンダタのところまで隙間を作らずにカンダタの足のすぐ下のところまで登ってきますと、亡者の身体が梯子のような役割を果たし、カンダタの思惑通り糸への負担が軽減したのでした。
(へっへっへ、俺の思った通りだ。今必要なのは『負担の軽減』ではなく『糸の補強』!これで下の奴を踏みながら登っていけば、糸はきっと切れないだろう。極楽浄土へ行くのもいよいよ夢じゃねえな!)
そしてとうとうカンダタの手が、極楽浄土に届きました。そして全身を引き上げると。
「よくやった亡者ども!お前らのお陰で『俺だけは』極楽浄土に辿り着けたぜ!じゃ、お前らはこれからも永遠に地獄で苦しみな!」
そう言って糸を引きちぎってしまいました。
「ハッハッハッハ!こりゃあ良い!こいつぁあ傑作だな!あの阿呆共め、見事に騙されやがって。さあて、極楽巡りでもするか……ん?」
ふと気付くと、彼の身体に何かが覆い被さってその影で周りが暗くなっていたようです。
「ん?一体何だぁ?これは……え」
振り返るとそこには。
「う、うわあ!何だ、何なんだお前!嫌だ、や、止めろ、来るな、来るなぁ、うわあああああ!」
結局彼も地獄へ逆戻り。そこからは皆さんご存知の通り。
極楽ももうお午近くなったのでございましょう。

  • カンダタもこのくらい頭を使えば良かったのに。
  • カンダタは何に何をされたのか。
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