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桜木ノア #16 9月某日

泣いている女子をさらに泣かせる趣味はないと言いつつ、結果的に桜木を泣かせてしまった俺だが、後悔はなかった。
桜木が、「泣いてもいい?」と言ってくれたから。
とっくのとうに泣いていた桜木に改めて許可を出すと、彼女は今までで一番の号泣を始めた。そんな彼女にどんな言葉をかけていたか、細かいことまでは覚えていないが、「今まで辛かったよな」とか「可哀想なんて思ってねーよ」とか、そんなことを言った気がする。
俺の声か、桜木の泣き声か……多分後者だろうが、それが教師を呼ぶ形になり、俺たちは怒られた。教師側からすれば、下校時刻もとっくに過ぎた後に、密室で男子生徒が女子生徒を泣かせているように見えなくもないのだから、まあ仕方ないだろう。
ただ、この時何と怒られたのかはまるで覚えていない。桜木に至っては「あの先生怒ってる時ずーっと眉がピクピク動いてて面白かったね」と言ってのけた。メンタルの切り替えが早すぎる。
ともあれ、桜木失踪事件はこうして幕を降ろした。

  • 桜木ノア
  • あと2話
  • 次回は10/21更新予定
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