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太陽に恋する月の話 その1

「ねぇ、ねえったら、ねぇ、地球ってばっ」
「聞こえてるって、なんだよもう」
「うさぎが寝ちゃったのよ、お話ししましょう」
「仕方ないな」
「見て。ほら、今日も太陽がとっても綺麗」
「君は本当に太陽が好きだね」
「ええ、あんなにかっこよくて、明るくて、暖かい星はないわ」
「無いなんてことはないよ。他の太陽みたいな星が僕らから遠くにあるだけさ」
「私達が感じられる場所にないなら、もうそれは存在しないみたいなものよ」
「違うと思うけどなぁ。それに、もし君が水星の近くに住んでたら、熱いとか言って太陽を嫌ってるかもよ」
「そうかもしれないけど、でもとにかく今は太陽が好きなのよ」
「そう」
「お話しできないかしら」
「流石に遠いからね」
「ねえ、あなたの中にいる生き物達、何か私が太陽とお話できる手段作ってないの?」
「ないよ。というか、僕らの存在を認識してないのに作れるわけないだろ」
「もう、役立たず」
「しらないよ」
「叫んだら聞こえるかしら、おーい、たーいようー!」
「聞こえないよ。何か伝えたいなら伝言を頼むことだね」
「誰に?」
「金星に。金星から水星に、水星から太陽に」
「面倒ね…まぁでも仕方ないわ。とりあえず金星を気長に待ちましょうか」

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  • これ、凄く好きです。とにかく今は太陽が好きなのよ、のやりとり好きです。
    その2、こっそり待たせて頂きますね。

  • 「うさぎが寝ちゃったのよ、お話ししましょう」
    「感じられる場所にないなら、もうそれは存在しないみたいなものよ」

    うわ〜。名言揃い(笑)
    見えるのに届かないもの、そう考えるとすごく切ないですよね。

  • うわぁ...すごく好きな感じです。
    こういう話って思いついても文に落とすのが割と難しいんですよね。(落としても僕の場合ありがちで長続きしない話になっちゃうから。)
    とっても続き気になります、支援です。