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教典 後編

 鴨盛りからの連想ではないが、詐欺のカモにされているのかな、などと思いながら本を開く。まず目に飛び込んできたのは、幸福になるための三か条という文言。

・他者に親切にしても見返りはないか、あったとしても忘れたころにささやかなお返しが来るだけです。短期的に確実な見返りが欲しい場合はクレームをつけましょう。

・この国は女性原理で動いている女性的な社会です。女性は守り、守られるという助け合いに喜びを感じ、助け合いのコミュニティを侵害しそうな存在を排除しようとする生きものです。男らしさにとらわれ、一匹狼でいたら出世はできません。自分に合った派閥を選び、自分をおびやかす存在は、つげ口、いじめなどで撃退しましょう。

・理想を語る人間を相手にしてはいけません。理想を語る人間は理想が実現しても満足できない異常者なのです。目の前の現実を処理することに長けた人間を応援しましょう。

 しばらくぱらぱらやって顔を上げると、ギャルふうが感想をききたそうな表情でわたしを見ていた。
「信者はどれくらいいるの?」
「日本人の半数以上が信者です」
「そうか」
 冷やを飲み干し、明日にでも教会に行ってみるよ、とわたしはギャルふうに言った。老後もこの国で暮らすつもりだからだ。

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