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ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 7.サイレントレイヴン ⑨

「…!」
振り向いてやっと誰かいるのに気付いたのか、彼は慌てて向こうを向いて走り出した。
「あ、待って!」
急に走り出したものだから、思わずわたしは呼び止めようとする。
「…ちょっと…」
数歩くらい小走りしたところでやっと彼は立ち止まった。
「“サイレントレイヴン”…」
「…長い」
ぽつり、と彼は呟いた。
「へ?」
「…もう1つの名前は長い。だから“レイヴン”でいい」
そう言いながら、彼はこちらを振り返る。
あ、そう…とわたしは言いかけた時、わたしはあるものに気付いた。
「…ネコ?」
薄闇の中にいるレイヴンの腕に、濃い灰色のネコが抱えられている。
「…」
本人はあんまり見られたくないのか、抱えてるネコをこちらから見えないようまた向こうを向こうとする。
「…ていうか、フード、被ってないんだね」
いつもはパーカーのフードを被っているのに今は被ってないことに気付くと、彼は言われるまで気付いていなかったのか、慌ててフードを深く被った。

  • ハブ ア ウィル ―異能力者たち―
  • このシーン、書くのずっと楽しみだったんです。
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