「…」
フードをいつものように被ったレイヴンは、無言でこちらを肩越しに見る。
…その目は、いつも通り冷たい。
そういう目を向けられて、わたしは少し凍り付いたように動けなかった。
…暫くの間、路地裏に微妙な空気が流れたが、何を思ったのか、レイヴンはまた向こうを向いて駆け出してしまった。
「あ! 待って!」
傘…と言いかけたところで、彼は立ち止まった。
「…傘…ないんなら入れば?」
「…」
…やっぱり沈黙。無視しているのかどうか分からないけど、こうなるのは何となく予想できていた。
…嫌いな奴と帰るのは、誰だって嫌だろうし。
でもこの強くなり始めた雨の中、傘なしで帰るのはちょっとかわいそうだった。
「て…いうか、むしろコレそのまま貸しちゃった方が良い…」
「別にいい」
「へ?」
急に喋ったので、わたしはポカンとしてしまった。