それはあなたでした。
絶望の淵から私を救い出し、光の世界を見せてくれたのは。
光の世界でもなお、私の手を引き、共に歌い踊り喜びを分かち合ってくれたのは。
独りだった私に溢れんばかりの愛を注ぎ、暖かさで満たしてくれたのは。
あなたでした。
あなたは何かを隠しているみたいでした。
時折、無理をして笑う時があるのに気づいたのです。
聞き出してみると、やはりあなたは困っているようでした。
できる限りのことをしたいと思いました。私を救ってくれたのはあなたですから。
私が頑張っていることを、あなたは喜んでくれました。
けれど、私はあなたのことを何も知らないのだと今更気づきました。
名前も年齢も職業も住所も全てでたらめでした。
光の世界に出たはずの私を、もう一度絶望の中へ突き落としたのは、
それは、あなたでした。
それでも、あの暖かさが忘れられないのです。