那由多の体重と運動エネルギーを乗せた一撃は、その衝撃を余す所なく男に伝え、
「ぐふっ……」
男の肺から、空気が漏れ出した。
「まだまだぁッ!!!」
その拳を引き、すぐさま掌底、両の掌底と続け、男の身体を空中に打ち上げた。
スピードを技量でパワーに変換する那由多にかかれば、精々85kg程度しかない男の身体を宙に打ち上げることなど容易いのである。
その身体より更に高く跳び上がり、次は回転しながらの踵落としを食らわせる。
男が地面に落ち切る前に回転を利用して強引に着地し、反動で今度は膝蹴りを繰り出し、再び宙に打ち上げる。それを両手の手刀で無理やり止め、とどめとばかりに貫手を鳩尾の辺りに命中させ、男を1mほど吹っ飛ばした。
「ハァッ!どうだ!ボクの怨嗟と憎悪と嫌悪を存分に込めた怒りの七連撃は!……しかしまあ、一回どこかで見ただけの技だけど、案外と上手く行くもんだな。さて、こいつをどうするか、ぬぉわっ」
突然那由多の膝から力が抜け、耐え切れずがくっと座り込む。これまでの動きをまるで疲労の色を見せずにやり切ったというのだから是非も無い。アドレナリンと気合で無理に動いていたのが、緊張の糸が切れたのだろう。
「うあぁ……いったぁ……。やっぱ貫手は駄目だな、もう脚も痛くて動かないし。あーあ、ここらで都合良く安芸ちゃんが通りかかってくれて治してくれたりしないかなー」