かなりオブラートに包んでくれたなと思う。質問なんかじゃない、断定だ。
「ご名答。目をかけてくれた先輩が、すごい人だったんだよね。使い古された表現に甘んじるのなら、文武両道を絵にかいたような人、かな」
「……その先輩についてのお話なんですね」
私の昔話と自分の話の接点を見つけたらしい。
私は何も言わず微笑んだ。
「本当にすごい先輩だった。学年でトップの成績で、部活内でも1,2を争うほど楽器も上手で、個人でも成績を残していて、交友関係が広くて、可愛い彼女がいて、医者の息子で」
涼花は笑う。
「最後のいります?」
「あったほうが面白いでしょうに」
二人でひとしきり笑うと、涼花が先に口を開いた。
「にしても、マンガみたいな人がいるものですね」
「本当にね。思い出しながら挙げていったけど、改めてスペック高かったんだなと思ったよ。唯一欠点を挙げるなら、身長に恵まれなかったことかな」
私より10センチは高かったけどね。
涼花はまた笑った。