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憧れと独白と傾聴とその先 #6

「まあ、こんな風に話しているけど、たくさん努力しての結果だっただろうからね。やっぱり今でもその先輩のことは尊敬している」
「先輩も同様ですよ」
 まったく、この子はこういう子だ。
「さっき、先輩に目をかけてもらえたって話したけど、別に依怙贔屓だったわけじゃない。厳しいことを言われたこともあるし、私のことで頭を悩ませてしまったこともある。でも、そういうことをしてもらえていたってことは、やっぱり目をかけてもらえていたのだと思うんだ」
 はい、と一言だけ相槌をうってくれた。ちゃんとわかっていますよ、そんな風に聞こえた。
 少しだけほっとした気持ちで続ける。
「部活では、その先輩と同じ楽器だった。本来であれば、私はその楽器じゃなかったかもしれないんだけどね」
「それはなぜ?」
「ありがたいことに、先生が直々に別の楽器やってくれないかってお願いに来たんだ」
「先輩、やっぱりできる子だったんですね」
「元々、ちょっと音楽かじってただけだよ。でも、私ははじめからずっとやりたい楽器決まっていたから、どうしても渋ってしまってね」
 察しのいい後輩は、目をきらりと光らせる。
「そこで、例の先輩の登場ですね」

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