「そうそう、あれはありがたかったな。先生と交渉してくれたんだ。この子はうちに欲しいなんて、花いちもんめでもやらない限り、後にも先にもないと思う」
懐かしいですねと返してくれる後輩に微笑む。
そんな後輩は、なぜだか自信満々に、こんなことを聞いてきた。
「先輩、そのことについて同級生の方々から何も言われなかったでしょう?」
突拍子のない質問に思わず固まる。
「うん……?まあ、そうね」
「先輩、1年生でソロやったって聞いたことありますよ。そっちの方面もできる子だったんですね」
「そんな情報どこから仕入れてくるの、何年も前の話じゃない。しかもそれは代打であって__」
「実力があったから何にも言われなかったんですよ。そうじゃなきゃ、先輩も依怙贔屓に見えるような引き抜きしません。頭良かったんですよね?その先輩」
先輩を出すなんで、そんなのずるいじゃないか。
仕方がないから苦笑する。
「でもね、何にも言われなかったわけじゃないよ。先輩からは比較的好かれていた方だとは思うけれど、一部の同級生が陰で何か言っていることは知っていたし。全員に好かれたいなんて思っていたわけじゃないけどさ、やっぱり、みんなに好かれることって難しいなとは思ったね。先輩より同級生のほうが一緒に過ごす時間は長いわけだし。ただ、そんなことがあっても嫌な思いをしなかったのは、友人にも恵まれていただけ」