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世にも不思議な人々73 殴る人その7

疲れ果てて座り込んでいる那由多の前に現れたのは、残念、安芸華世ではなく、キタこと嵐山斎六であった。
「やあやあお疲れ様、全部見てたよ。いやあ、すごかったじゃあないか。あんな化け物相手に素の身体能力だけであそこまで渡り合って最後には能力生命体でやっつけるたぁ、ってぬぐふっ!」
那由多がキタの服の腹の辺りに取り付き、胸の辺りまで這い上がり、そのまま顔面を真っ直ぐ殴りつけた。
「はあっ!?ふざけんなよ!ボク死にかけてたからな!見てたんなら助けてよ!」
「うぅ…、いたたたた……。だって君、絶対勝てたじゃない?それなら助けなんかいらぐっふぅ」
那由多が身体を振り回し乱暴に蹴りを入れる。
「お前万が一って言葉知ってる!?ちょっとでもミスったら詰みだったからね!……ところでキタさん、今身体中ボロボロなんだけど、治せる?」
「いやー、ちょっと無理かなー」
「使えないな……」
「ひどいなー…、ところでこいつどうする?」
キタが側に転がっている男を指差して訊ねた。
「別次元に飛ばす?バラバラにしちゃう?それとも……」
「おっとその男、我々に任せてもらおうか」
そこに唐突に現れたのは、男女二人ずつの四人組だった。そのいずれも、あまり歳は行っていないように見える。
「……誰?」
那由多がポカンとしながらも尋ねる。
「そいつのような社会不適合者の能力者の居場所を作る組織の者だ」
「まあ要するに、不良の集まりの代表だね」
リーダーらしき男の発言に、一人の少女が突っ込みを入れる。
「身も蓋も無えな」
「まあ事実だからねえ」
「しかしそんなことなら歓迎だ。是非ともこの少年をまともな奴にしてやってくれ。正直僕の手に余る」
キタが快諾した。
「承知した。きっとそうしよう」
「あ、そうだ、そこのちっちゃいお嬢さん?」
「あぁ?」
リーダーではない方の男に言われて那由多が不機嫌そうに答える。
「お疲れ様。良くこれを相手にやり切ったね。褒美をくれてやろう。ベホイミ!」
不思議なことに、その呪文の直後、那由多の全身の痛みがひいた。
「うお、あ、ありがとうございます」
「ではさらば」
「よろしく頼んだよ」

  • 童謡系能力者がまた何かやってます
  • 『殴る人』編、無事完結。
  • まーた作者さんは変な奴出してー。
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