「何ですか?」
「褒めてもらったというか、認めてもらった、かな?合唱コンクールってなかった?」
「ありましたね。私の学校でもやっていましたよ」
「それの伴奏を、私は担当したんだ。そしてその年、学年の伴奏者に贈られるピアニスト賞なるものをもらったんだ」
「あれですね、伴奏者ナンバー1」
涼花が趣も何もない言葉で片付けるから、また苦笑する。
「そう、それ。その日の放課後、先輩とたまたま会ってね。ピアノのこと、すごく褒めてくれたんだ。めちゃくちゃ良かったって。無条件に褒められたのはあれが最初で最後だったかな……」
「先輩、相当嬉しかったんですね」
涼花がにこにこしている。
なんとなく恥ずかしくなってしまった私は、あのときもなんとなく恥ずかしくなったことを思い出す。
「まあでも、その先輩も指揮者賞をもらっていたんだけどね」
「……ほんと、何でもできますね、その人」