結月視点
「瑠衣にあったことあるのか?」
僕が玲に尋ねると、玲は顔を顰めて
「…わからないんですよ。でも、きっと瑠衣ちゃんなんだと思います。私が実家を出たのは、中学校一年生の時なんです。それから、私がもともと居たあの犯罪集団に拾われました。でも、私たち姉妹が離れ離れになった理由は確かに覚えています。」
と、答えた。
「どうしてなのか言えるか?」
「…それは、少し待ってもらえますか」
そう言い放つ玲の表情はどこか辛そうだった。
玲視点
思い出したくもない、あの両親。憎悪の念があふれてくる。顔だって覚えていない。結月さんに質問をされていたことを思い出し、結月さんの顔を見る。私と同い年だとは思えないほど、大人びたその行動。不安そうなその表情。嗚呼、また誰かを困らせてしまった。こんな有様だから捨てられてしまうんだ。
意を決して結月さんに向き合う。
「私の昔話、聞いてくれますか?」
そう尋ねれば、一歩私に歩み寄って微笑みながら彼女は頷いた。どうしてだろう、いつからだろう、人から向けられる優しさが怖くなったのは。また、私のせいで傷つけてしまうのだろうか。どうして、その瞳はそんなに澄み切っているのだろうか。
そんなことを考えていれば、彼女は口を開いた。
「怖がらなくていいよ。辛かったら、途中で言うのをやめてもいい。大丈夫、玲も瑠衣も僕が守るから。」
その目は真っすぐ私を見つめていて。どうしてこんなにもこの人は優しいのだろうか。その優しさですら、不快に感じてしまうほどに私は愚かで。
でも、この人は信用してもいいのかもしれない。
おお、こちらこそ久しぶりです。
実は自分もしばらくぶりにここへ帰ってきました。
…放置しかかってた物語の再始動は、あともう少しですが。