棲みよい水で生きたかった。ただ、棲みよい水には魚がたくさんいるもので、群れがあればルールがあるもので、その群れはどうも私には生きにくいらしかった。
かといって濁った水に棲むのはごめんだった。単純に気持ちが悪い。一生吐き気を伴うのであればとても生きていけそうに無い。
彷徨い泳ぐうちに小さな群れを発見した。
とても小さな群れだ。強さは無い。けれど生きていくには充分な絆があるらしかった。
その群れはとても棲みやすかった。生きるのが楽しいと初めて感じられた。
群れの中の1人が言った。「夢が出来た」と。彼は群れから出て遠いところへ泳いでいった。
時が流れると別の仲間も何処かへ泳いで行った。つがいになったらしかった。
気がつけば、私はまた1人になっていた。
未来を追って泳がなければいけないのだと、私は初めて気がついた。