やたらと明るい街が眩しい
僕とは違う景色を見る人々の語らう笑顔に背を向け
そっと静かに息を吐きイヤフォンをつける
隣に座る君の瞳だって
僕のとは違う景色を映しているんだろう
どうか口には出さないで
聞かないうちはまだ現実じゃない
言葉なんて所詮そんなもんさ
耳へ流れ込んでくる言葉の音のリズムの心地よさに身を預ける
どうせ伝わりやしないのなら
もう少しだけ口当たりの良い空っぽな言葉を宙に白く浮かばせていよう
心にしまっておきたい言葉の1つや2つくらい
誰にだってあるもんだろう
誰のものでもない僕の言葉
世界に溢れすぎた大事な言葉
口に出した途端それはもはや僕のものではない
まるでいつの日か真っ赤な小さな手で握って溶けた真っ白な雪のように
でも今日くらいはいいだろうよ
ありもしない言葉の力をもう一度信じてもいいだろうよ
すがるようにはめた耳のイヤフォンは外して
雪の儚さもこの胸の痛みも
何も知らなかったあの頃のように
願いを書いて家の一番高いところにおいた不思議な魔法の手紙のように