その様子を見て少女はふふっと笑うと、目の前のモノに向き直った。
そしてこう呟いた。。
「…そういえば、”依頼”ってどんなでしたっけ」
”依頼”のことをすっかり忘れかけていた屋敷の主人は、ハッとしたように答える。
「えぇと…簡潔に言えば、領内で害を為す精霊の退治ですが…」
「…並の魔術師では対処できないから、私に依頼したのよね…」
少女はそう呟いた後、少しの間考えるかのように黙っていたが、不意に口を開いた。
「貴方も太刀打ちできなかったのよね?」
尋ねられて、屋敷の主人は恥ずかしげに、まぁ…と答えた。
…そう、と少女は答えると、突然屋敷の主人の方を向いた。
そしてこう言った。
「…その依頼、私が受けるわ。―ただし、報酬にコイツをくれないかしら?」
「…へ?」
屋敷の主人は想定外の言葉にぽかんとする。
「別に良いでしょう? 別に貴方が”マスター”というワケではないのだし。それと、依頼にはそれ相応の報酬が必要でしょう? 私みたいな、”お雇い魔術師”は特にね」
…駄目かしら?と彼女は笑いかける。
屋敷の主人は暫くの間、少女を見ながら呆然としていた、が、すぐに我に返って彼女に依頼するか考え始めた。
そして、屋敷の主人は口を開いた。
「…では、お願いします」
それを聞いて、少女は目を細めて笑った。
「…そう。じゃぁ領内の案内をお願い。精霊の出現場所とか、被害を受けた場所とかね。あとコイツを借りるわ」
あ、はい…と答えてから、屋敷の主人はへ?と呟いた。
「この使い魔を借りるのよ。便利な”武器”なのに、使わないでいるのは勿体ないわ…」
そう少女は言うと、広間の出入り口の方へ歩き出した。
「あぁ、ちょっとお待ちください」
そう言って、屋敷の主人も歩き出した。
少女はその言葉を聞かないフリして進んでいたが、ふと立ち止まって振り返った。
「…”お前”も行くわよ」
そう言われて、”お前”と呼ばれた使い魔は、ハッとしたように少女の方へ向かって歩き出した。
それを見て、少女は少しだけ笑うと、また向こうを向いて歩き出した。