わたしは森のパン屋。お客は熊さんや、りすさん。熊さんは蜂蜜でお支払い。りすさんはどんぐり、くるみでお支払い。
まあ、当然赤字だよね。
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あれ。熊さんとりすさんが、けんかしてる。さっきまでパンを半分こして仲よく食べていたのに。
どうしたの、けんかは駄目だよ、って間に入ったら、りすさん。
「だって、熊さんが、神様なんていないって言うんだもの」
「いるわけないだろ。だいいち見たことあるの?」と熊さん。
「そりゃ……ないけど」と、涙ぐむりすさん。
わたしはりすさんに言った。
「神を否定されてむきになるのはお前の信仰心が足りないからだ」
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パンが作れなくなった。資金が底をついたのだ。
冬がやってきた。
熊さんが、飢えて死んだ。遺体は、りすさんと半分こした。
わたしは毛皮でセーターを、内臓で漢方薬をこしらえた。
りすさんがどのように活用したのかはきいてない。興味もない。