「…いるなぁ」
今日は近所の神社で縁日。つったって小さな小さな稲荷神社の縁日である。夏祭りの縁日に比べれば、ちっぽけでちゃちい。
それでも休日の暇を潰すのにはピッタリだった。
…ここは田舎で、遊べる場所が少ない。
あってショッピングモールくらい。
だからこういう縁日はちょっとでも遊べる良い機会なのだ。
…だが。
「…面倒なアイツらめ」
面倒な事に、クラスの男子たちの姿が見える。
正直言って、学校の外で関わりたくないメンツだ。
ここは田舎だからな~、みんな行くところは一緒なんだよね…
仕方ない、そう思いながら、わたしは狐の面を被った。
「…よぉ」
あぁ、やっぱりか、と心の中で呟いてわたしは振り向く。
そこには、昔から見慣れた男子の姿があった。
「なぁに、それでお前は化けたつもりなのか?」
彼はいつも通り意地悪気に言う。
「フン、あんたみたいなのにはバレるけど、ほとんどの人間にはバレないのよ」
そう言いながら、わたしは仮面を外す。
それと同時に、彼の目に見えるわたしの姿も陽炎のように揺れて変わったことだろう。
「実質この仮面は、わたしの顔を隠すためじゃなくて、うっかり何も知らない人間に、顔を見られないようにするためなのよ。そのためのカモフラージュ」
これは保険なのよ、とわたしは説明する。
それを聞き、ふ~ん、と彼はうなずいて、にやりと笑った。
「…もしや、自分の”力”に自信がないのか⁇」
「ちょっと! 別にそういうわけではないわ…アンタだって、指定した人間以外には化けが通用しないじゃない!」
そう言い放つと、彼は…面白い、と言うような表情をした。
そしてこう聞いてきた。
「…じゃあ、また勝負でもするか?」
「ええ、するわ」
わたしはいつものように答えた。
どっちがより優れてるか…なんて小学生みたいだけど、自分の力をなめられちゃ困る。
…なら。
「あ、でも、また今度機会がある時ね。今日はもう無理があるし…何より、審判がいないわ」
だからまた別の機会に、そう言ってわたしはにやっとした。
ああ、そうだな、そう応える彼の目は暗緑色だった。