企画は、何のレスポンスもないまま終わった。
スポーツジムに入会した。もちろんプールつきのやつ。
自分にはこれしかないんだ。
水泳選手は無理でも、インストラクターだったらいける。
学校帰り、久しぶりに水に入った。
三往復したあたりで、わたしは何者かに排水口に引きずり込まれた。
半身を起こすと、少し離れた所に河童がいるのが見えた。
河童が口を開いた。
「俺の棲家の情報を誰からきいた」
「情報?」
何を言ってるのだろうか。ここは、寒い。
「小説に書いただろう」
「……あれは、山椒魚の話ですけど」
「とぼけるな。とにかく、誰から教わったのか吐くまで帰すわけにはいかない」
わたしは安易に作家を目指したことを本気で後悔した。
「誤解です。帰してください」
河童が近づいてきた。小六のころ妖怪大百科で見た河童とリアルのやつは全然違ってた。干した毒蛙みたいな顔をしていた。
首筋に息がかかった、腐った卵のにおいがした。わたしの恐怖心はマックスに達した。瞬間、脳内に強烈な光が広がるのを感じた。
覚醒したわたしは左手をチョキにして目つぶしをくわせ、間髪を入れずグーにした右手を河童の頭頂部にたたきつけた。
河童の皿割れた。