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スケッチブック

ガラス細工の立派な花瓶
すみれの花をさしてみる
花瓶の方がずっと豪華で
すみれは頰をほてらせた
「私なんか」と遠慮して
主役の座を花瓶にゆずる
あまりに健気なすみれを
私は思わずそっとなでる
スケッチブックの表紙に
紫の絵の具がシミを作る
それを指でそっとなぞり
六枚の花びらを描きあげ
細い緑の茎を伸ばしつつ
少し迷って絵筆を置いて
花瓶は描かない事にした

風がそっとすみれを撫でる

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