0

緋い魔女 Part 8-Ⅱ

「―時間も時間だから、これぐらいしかできないけれど」
グレートヒェンは外套の内側から何かを取り出しながら言う。
「…退路を拓くぐらいなら!」
後方へと下がりながら、グレートヒェンは手の中の青い石ころを幾つか放り投げた。
青い石ころは光の糸を引いて広がり、簡易的な防御結界を展開する。
グレートヒェンは結界を背にそのまま足跡をたどって走り出した。
もう日も暮れかけ、あまり視界は良いとは言えないが、森のどこら辺を通ったかは覚えている。
このまま出口まで突っ切れば、とグレートヒェンが思った時、背後でガラスが割れるような音がした。
「…!」
まさか、と振り向くと、結界で足止めした精霊が、もうすぐそこまで迫っていた。
「さっき張ったのは簡単な術式だったけど…思ったより破られるのが早いわね」
仕方ない、と彼女はどこからか奇妙な形の黒い短剣を取り出した。
―その時だった。

レスを書き込む

この書き込みにレスをつけるにはログインが必要です。