春の匂いが温かく包み込む季節になると君はつぶやく。
“春の季節が来たのね”と。
春の風に髪をなびかせ少し寂しそうに笑う。
君の横顔は“別れの季節ね”と言いたいようだった。
いつも綺麗な君の横顔は今日も綺麗だが、
桜が舞うたびに哀しそうな顔になる。
春の匂いがすると君が哀しそうな顔をするから、
この季節は嫌いだ。
それに今年は
僕も別れをつげなければいけない。
君も僕と同じ人に別れをつげるから、
いつもより寂しそうな顔なんだろうな。
君は言った。
“じゃあ行こうか。あの人のところへ。”
僕はこれから、あの人にさよならを伝えに行くんだ。